近年「お墓の納骨室に入り切らない」「墓じまいをしたい」などの理由から、遺骨の処分を検討している方が増えています。
しかし、遺骨の処分方法を知らないという方も多いでしょう。
そこで本記事では、遺骨の処分方法や法律について解説します。
遺骨の処分を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
遺骨の処分に関する法律
遺骨を勝手に処分すると、「刑法」第190条と「墓地、埋葬に関する法律」第4条により処罰の対象となります。
それぞれの法律の内容は、以下の通りです。
「刑法」第190条
この条文は「死体、遺骨、遺髪等に対する損壊等の罪」について定めています。
死体や遺骨、遺髪を損壊、遺棄、領得した場合、3年以下の懲役に処せられます。
これは故人の尊厳を守り、遺族の感情を保護する目的があります。
遺骨を不適切に処分したり、無断で持ち去ったりする行為は、この法律に違反することになるので注意しましょう。
「墓地、埋葬に関する法律」第4条
この条文は死体の埋葬や火葬、改葬について規定しています。
埋葬や火葬は、死亡地か埋葬地の市町村長の許可を得なければならず、無許可での埋葬や火葬はできません。
また、火葬場以外での火葬も原則として認められていません。
この規定により、遺骨の取り扱いに関する公衆衛生の確保と、故人の尊厳を守ることが目的とされています。
【参考】墓地、埋葬等に関する法律
東日本と西日本で収骨方法が異なる
東日本と西日本で、火葬後の収骨方法が異なります。
東日本では、火葬後の遺骨を、頭のてっぺんから足の先まで、全ての部位を収める「全収骨」が一般的です。
2人1組で箸を使い、足の骨から順番に上へと丁寧に拾い上げていきます。
この方法では遺族が直接遺骨に触れることで、より深い死の実感と受容につながるとされています。
一方、西日本では喉仏の骨など重要な骨のみを骨壷に収め、残りの遺骨は火葬場で処理される「部分収骨」が一般的です。
効率的な葬儀進行が可能で、遺族の精神的・身体的負担を軽減できるメリットがあります。
特に高齢の遺族や、故人との別れに強い精神的動揺を感じる方々への配慮として選ばれることが多いです。
遺骨の処分を検討するケース
遺骨の処分を検討する主なケースは、以下の通りです。
- お墓の納骨室に入り切らない
- 墓じまいをしたい
- 遺骨に思い入れがない
どのようなケースがあるのか、1つずつ見ていきましょう。
お墓の納骨室に入り切らない
お墓の納骨室のスペースには限りがあり、代々の遺骨が増えることで収納が難しくなるケースが増えています。
この場合、まず寺院や霊園に相談し、納骨室の拡張や改修が可能か確認するのがおすすめです。
また、複数の骨壺をまとめて合祀することで、スペースを確保する方法もあります。
近年では、古い遺骨を粉状にして特殊な容器に収め、スペースを節約する「粉骨」というサービスも提供されています。
それでも対応が難しい場合は、永代供養墓への改葬や、樹木葬、散骨など、新しい供養方法への切り替えを検討しましょう。
ただし、遺骨の取り扱いには法的な制限があるため、必ず寺院や専門業者に相談しながら進めることが重要です。
墓じまいをしたい
高齢化や核家族化により、お墓の継承が困難になるケースが増加しています。
墓じまいを検討する際は、まず親族間で十分な話し合いを持ち、全員の同意を得ることが重要です。
その後、寺院や霊園に墓じまいの意向を伝え、必要な手続きや費用について確認します。
遺骨の移転先としては、永代供養墓への改葬が一般的です。
これは寺院が永続的に供養を行うため、継承者がいなくても安心です。
その他、樹木葬や納骨堂など、管理の手間が少ない供養方法も選択できます。
また、改葬許可の申請など、行政手続きも必要となるため、計画的に墓じまいを進めましょう。
なお、墓石の撤去や整地など、現在の墓所の原状回復も必要となる場合があります。
遺骨に思い入れがない
故人との関係性や個人の価値観により、遺骨への思い入れが薄い場合もあります。
しかし、遺骨の取り扱いには法的な制限があり、無断で処分することはできません。
適切な方法としては、市町村が運営する合葬墓や無縁墓への納骨が考えられます。
これらは比較的低コストで、管理の手間もかかりません。
また、一部の寺院では、無縁仏として受け入れを行っているところもあります。
散骨という選択肢もありますが、場所や方法に制限があり、専門業者に依頼する必要があります。
重要なのは、たとえ思い入れがなくても、遺骨は故人の尊厳に関わるものとして、適切な手続きと方法で処分することです。
感情的な判断だけでなく、法的・倫理的な観点からも、慎重に対応を検討することが推奨されます。
供養の選択肢
続いて、供養の選択肢について解説します。
- 遺骨を焼き切りをする
- 合祀墓や永代供養墓へ移す
- 手元供養にする
- 散骨する
複数の選択肢があるため、親族間で話し合い適切なものを選びましょう。
遺骨を焼き切りする
西日本で見られる「焼き切り」は、火葬後の遺骨を収骨せず、そのまま火葬場で処理を依頼する習慣を指します。
これは地域によって「野焼き」「素通し」「素通り」などとも呼ばれ、特に四国や九州の一部地域に残る風習です。
この習慣の背景には、「死者の霊は煙となって天に昇る」という仏教的な考えや、「遺骨に執着しない」という価値観があるとされています。
また、貧しい農村地域では、お墓の購入や管理が経済的に困難だったという歴史的背景も指摘されています。
ただし、「焼き切り」をしている火葬場は、西日本のごく一部です。
「焼き切り」を希望する場合は、必ず事前に葬儀社へ相談しましょう。
合祀墓や永代供養墓へ移す
合祀墓や永代供養墓は、個人での管理が不要で、寺院や墓地管理者が永続的に供養をしてくれる現代的な供養方法です。
合祀墓は複数の遺骨をまとめて安置する共同墓所で、維持費用が比較的安価なのが特徴です。
一方、永代供養墓は、個別の区画や納骨室を持つものが多く、やや費用は高めですが、より個別性の高い供養が可能です。
どちらも、墓地の継承問題や管理の手間から解放されるメリットがあります。
移転の際は、改葬許可申請が必要で、現在の墓地管理者や寺院との調整も必要です。
また、永代供養の契約内容や費用は施設によって大きく異なるため、複数の選択肢を比較検討しましょう。
将来的な管理体制や供養の方法についても、事前によく確認しておくことが重要です。
手元供養にする
手元供養とは、遺骨の一部を特殊な加工を施して、ペンダントやブレスレットなどのアクセサリーや、置物として身近に置いておく供養方法です。
遺骨を加工する際は専門業者に依頼する必要があります。
手元供養の利点は、いつでも故人を身近に感じられることと、場所を取らずに供養できることです。
ただし、すべての遺骨を手元供養に回すことは認められておらず、主たる遺骨は墓地や納骨堂などに安置する必要があります。
また、将来的な継承についても考慮が必要で、次世代への引き継ぎ方法や、万が一の場合の対応についても事前に検討しておくことが推奨されます。
近年では、様々なデザインや形態の手元供養品が開発されており、個人の好みや生活スタイルに合わせた選択が可能です。
散骨する
散骨は、遺骨を粉末状にして自然に還す供養方法です。海洋散骨が最も一般的ですが、山や森での散骨も可能です。
この章では、「海洋散骨」「山岳散骨」「空中散骨」について解説します。
海洋散骨
海洋散骨は、沖合から数キロ離れた場所で行うのが一般的です。
海には管理者がいないため、トラブルが起きにくい散骨場所と言えるでしょう。
海洋散骨には、個別散骨・合同散骨・代理散骨の3種類があります。
散骨種別 | 費用 | 特徴 |
---|---|---|
個別散骨 | 30万前後 | 1家族のみで船をチャーターして行います。 プライベートな空間が保たれていますが、一番費用がかかります。 |
合同散骨 | 15万前後 | 複数の家族で船を借りて行います。 人数制限があったり日程調整を行う必要があります。 |
代理散骨 | 10万前後 | 家族の代わりに業者が代理で散骨します。 散骨時の写真や散骨実施証明書を発行してくれる場合が多いです。 |
山岳散骨
山の中に散骨する方法を、山岳散骨と言います。
業者に依頼する場合の費用は、20万〜30万前後です。
この後に紹介する海洋散骨よりも条件が厳しいため、山岳散骨を行っている業者が少ないという特徴があります。
山の中は、国有地や都道府県所有地、個人の私有地になっていることが多いです。
山岳散骨を行う際には事前に所有者に許可を取ってから行うようにしましょう。
空中散骨
空中散骨とは、ヘリコプターから散骨する「空中葬」やロケットや人工衛星などに遺骨を乗せて宇宙へ打ち上げる「宇宙葬」、風船につけて遺骨を飛ばす「バルーン葬」などがあります。
散骨が多様化していることが分かります。
散骨のメリット
最後に、近年選択する方が増えている「散骨」のメリットを解説します。
- 費用を抑えられる
- お墓の管理や維持をしなくて済む
- 地球環境への負担が少ない
- 故人との思い出が増える
- 故人の希望を叶えられる
メリットが多くあるため、新たな供養方法としてぜひ検討してください。
費用を抑えられる
ある調査によると、従来型の供養方法では、一般墓で160万円近く、納骨堂でも80万円以上の費用が必要となります。一方、散骨は最も高額なプランでも30万円程度で実施可能で、経済的な供養方法として注目されています。
お墓の管理や維持をしなくて済む
従来の墓石では、清掃や供花、管理費の支払いなど、継続的な維持管理が必要です。
特に高齢化や核家族化が進む中、「子孫に負担をかけたくない」という思いから散骨を選ぶ方が増えています。
なお、従来の墓地では管理費の未払いが続くと、墓石の撤去などの措置が取られる可能性があります。
地球環境への負担が少ない
海洋散骨などの自然葬は人工物を用いない葬送です。
人はもともと自然から生まれました。
自然葬には、元いた自然に還るというコンセプトがあります。
散骨は、地球環境への負担が少なく最も自然な葬送だと言えるでしょう。
故人との思い出が増える
海や空での散骨では、故人と過ごした思い出の場所を巡ることができます。
「この景色を一緒に見ている」という感覚を味わいながら、心に残る特別なお別れの時間を過ごすことが可能です。
故人の希望を叶えられる
かつては法的な制限により難しかった自然への散骨も、現在では一定のルールのもと実施可能となっています。
生前に故人が希望した場所での供養を実現できることは、散骨の持つ大きな特徴の一つです。
まとめ
本記事では、遺骨の処分方法や法律について解説しました。
遺骨を勝手に処分すると、「刑法」第190条と「墓地、埋葬に関する法律」第4条により処罰の対象となります。
そのため、遺骨は勝手に処分せず専門業者に依頼してください。
また、供養の選択肢として以下のものが挙げられます。
- 遺骨を焼き切りする
- 合祀墓や永代供養墓へ移す
- 手元供養にする
- 散骨する
中でも、散骨は「費用を抑えられる」「お墓の管理や維持をしなくて済む」「故人の希望を叶えられる」など多くのメリットがあります。
「散骨」を新たな供養方法として、ぜひ選択肢に入れてください。